媒体名: 中央経済社 「旬刊経理情報」 P48 (2008.12.10)
船場吉兆、ミートホープ、赤福など、食品業界では不祥事が相次いで露見しました。一連の不祥事は、食品の安全性こそ否定されなかったものの、ひとたび問題が露見すると、社会からの批判が高まり、瞬く間に企業は休業または倒産に追い込まれます。
このような不祥事事件全般に共通していることは、いずれも、食の安全に関する問題でもなく、食品衛生法・JAS法等の法令違反行為が事件発覚の端緒ではなかったことです。むしろ、この業界は「隠蔽」体質があるのではないかとの社会からの不信感や疑念から社会批判が増幅し、企業は休業、倒産を余儀なくされるのです。今や、安い居酒屋でも刺身のつまの大根を確認し、ラーメン屋では餃子の中身を確認してから食べる消費者もいるほどです。もはや、法令の範囲内であったとしても、消費者に真実を伝えないで売りつけることは、時には「詐欺」と呼ばれかねません。
このように食品企業をとりまく企業不祥事が続発するなか、企業が対応をすべきことは、法令などの形式的用件の遵守の整備に腐心することよりも、まずは、「誠実」な経営を遂行し、社会に対して正確かつ適切な情報開示の徹底をはかることこそ、消費者に安心感をもたらし、その信頼を獲得することができるのです。
これまでの慣行など、現場の実態に目を背け、安直に、形式的用件としての規則やマニュアルを整備し、表面的なことばかり外部に対して説明しても、無駄なコストがかかるばかりで十分な効果が期待できません(=コンプライアンス不況)。消費者の正しいニーズを理解し、それを踏まえた対応をはかることが、社会からの期待に応えることとなり、結果として社会からの信頼に繋がるのです。特に、これまで業界慣行として許容されてきたことや、暗黙の了解とされていたことも、消費者意識の急激な変化のなかでは、ひとたび表に出れば、一切の猶予はなく、グレーではなく『クロ』と判定されるのです。そして、問題が露見した時に、たとえ、現場の責任としたとしても、慣行に基づく行為は、組織責任が問われ、当該企業としての存続が危ぶれるまで追い込まれます。
現在のように不信感が蔓延する社会では、これまでの悪しき慣行を直視し、できるだけ早期に改善を図っていくことは、同業他社との差別化となり、時としては企業競争力の要因にもなるのです。
それゆえに、今、企業が実践すべきことは、細かな法令規則等への対応や整備に尽力することよりも、まずは、現場に潜む実態をどれだけ拾うことができるかということです。これこそがリスクマネジメントの成功の鍵を握ります。
実際に、現場では、これまでグレーゾーンとされたものについて、見て見ぬふりをしたり、臭い物に蓋をしてきたことが多々あるのではないでしょうか。これらのグレーゾーンに、いち早く手をつけ、抜本的な対応策を検討することは、同業他社の中で差別化となり、競争力の源泉となりうるのです。とりわけ、グレーゾーンとされるものは、短期間での解決が困難な問題が多いですが、大切なことは、結論を導くことではではなく、現場に潜む実態の問題意識をもち、いち早く対応に向けた検討を行うことができるかどうかに意味があるのです。
あなたは、目の前にある1個何万円もする高級食材を、安全衛生の行き届いた環境下で一瞬でも床に落としたらその食材をどうしますか。想像してみてください。何気ない行動が、企業経営に重大な影響を与えかねないのです。