旬刊経理情報連載記事


事例でみる企業不祥事とその対策
第4回 環境問題への現状認識とリスク対応

媒体名:中央経済社「旬刊経理情報」P41 (2009.01.01)

新日本有限責任監査法人 公認会計士
大久保 和孝

コピー用紙などを製造する24社のうち、「17社」という7割にのぼる会社で古紙配合率を偽って表記したこと、電力業界では環境データを5年間にわたり虚偽報告をする会社があったなど、環境問題に関わる偽装問題が近年増えています。いずれの不祥事も環境に与える負荷こそ限定的なものの、社会的な信頼を損なうことになりました。これら不祥事は何が問題で起きてしまったのでしょうか。

経営者は環境への対応にどのような重要性をもって取り組んでいるのでしょうか。多くの企業が環境問題の重要性を認識し、積極的な対応を図ろうとします。しかし、ともすれば、「環境」という美辞麗句をまくしたてるものの、十分な人員や予算措置もないまま、単にISO14001を取得したり、環境報告書を作成することで環境対策を施したと考えている経営者もいるのではないでしょうか。実際、冒頭に挙げた業界各社のほとんどで環境報告書を作成しています。

日本では、1950年代から1960年代にかけて企業による大きな公害問題が社会問題へと表面化しました。その頃と比較すれば、もはや重大な健康被害をもたらすような企業はほとんどありません。むしろ、近年では、環境に配慮した事業活動を行うことが、企業の当然の責務とされるようにもなりました。それゆえに、環境問題を経営上あえて優先して取り組む必然性も感じにくくなっていることも事実です。また、メディアもしばしば「環境問題」を取り上げるものの広告宣伝的な色彩から抜け切れておらず、日本の社会全体の捉え方も限定的な関心しかなかったという側面も否定できません。

しかし、地球温暖化問題を端に1993年に環境基本法が制定され、それ以来、社会の関心が環境問題へと向き始めました。さらに、ここ数年の肌感覚による異常気象現象に加え、ゴア元副大統領による「不都合な真実」の映画を端にダボス会議・洞爺湖サミットなど国内外の主要会議のすべてにおいて最重要テーマとして環境問題が取り上げられようになり、社会の関心が急激に高まったのです。

その中で、環境に関して「嘘」をついていた企業が露見化したのです。それが、環境データの改ざんや再生紙偽装問題です。これまで暗黙のこととされ、また実際のところ環境への影響も限定的(軽微)であったにもかかわらず、大きな社会批判を呼びました。言うなれば、長年にわたり黙認されてきたことでも、社会の関心が高まったことでひとたび問題が表面化すると、過去の経緯や背景にある事情などは一切関係なく、すべて「クロ」と判定され、大きな社会批判をもたらし、企業に著しいダメージを与えます。

社会の関心が急激に変化する中では、企業は単に法令の形式的要件と向き合うのではなく、法が立法・改正された背景にある社会の要請や関心の変化を積極的かつ的確に把握し、迅速に対応することが求められます。その一方で、社会の環境変化を捉え社会の問題に率先して取り組むことは、ビジネスチャンスを掴むきっかけともなるのです。

排出権取引市場が始まった今、もはや環境問題への対応は企業にとって義務として対応せざるを得ない重要なコンプライアンス問題であると同時に、率先して取り組むことでビジネスチャンスを掴む可能性があり、企業の競争力の源泉ともなりうるのです。

急激に社会環境が変化する中では、環境変化に適応すべく、経営者自身が問題認識を根本から変え、環境問題を他の経営課題と二分した取り扱いとせず、事業戦略上の主要な課題として捉えることが不可欠です。

コンプライアンス, CSR, 環境の新日本サステナビリティ研究所

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