旬刊経理情報連載記事


事例でみる企業不祥事とその対策
第8回 不二家問題を事例にリスク管理を考える(上)

媒体名:中央経済社「旬刊経理情報」P53 (2009.05.10)

新日本有限責任監査法人 公認会計士
大久保 和孝

これまでこのコーナーでは近年に起きたいわゆる「不祥事」を取り上げ、その社会的背景や企業側の問題点を探ってきました。仕上げとして最後の3回を使い、特に世間の耳目を集めた不二家問題を取り上げ、危機管理と情報開示のあり方、危機への対応方法を論じたいと思います。なお、紙面の関係上、問題の詳細は不二家ホームページ、不二家信頼回復対策会議報告書をご参照ください。

平成19年1月、期限切れ原材料使用問題を外部コンサルタントに指摘されたことが表面化し、企業倫理に欠ける安全を軽視した姿勢や隠蔽体質との疑念から、不二家に対してメディアを中心に大きな社会的な批判がおき、同社の経営を厳しい状況に追い込みました。しかし、この問題は、当初、局所的な問題であったものが、一部のメディアの誤解報道により瞬く間に会社全体の問題とされ過剰な報道を誘発したものでした。

平成18年11月、業務改善支援を行っていたコンサルティング会社が、突如「期限切れの原料使用問題」について指摘し、「これがマスコミに発覚すれば雪印の二の舞となる」との文書を関係者に配布しました。後に、本文書がメディアから会社ぐるみでの隠蔽行為を疑われる発端となりますが、同文書に書かれた内容は必ずしも事実関係を正確に捉えたものでなく、一方的に作成されたものだったことから翌日には関係者から回収されました。しかし、12月29日には、一旦回収されたはずの同文書が何者かによってフランチャイズ(FC)店にファックスされ、続けて年明け1月3日にも他のFC店にファックスされました。さらに1月9日には、マスコミ各社にも同文書がファックスされたのです。

この事件では危機管理対応の観点から3つのポイントを捉えることができます。

まず、最初にコンサルタント会社から指摘を受けた時点です。翌日には社長の指示に基づいて生産本部長が当該工場に出向き、事実関係の確認と改善指導を図っています。そこで、情報開示の必要性の有無が問題となりますが、本件は、その性質から考えればその必要性がなかったものです。しかし、あらかじめ情報開示の判断基準を明確にしておくことは肝要です。

次に、12月29日時点でどう対応すべきかが問題となりました。振り返れば、この時点でも、当該文書について公表の必要性は議論の余地があります。しかし、当時の環境では情報開示の必要性はないと考えられます(不二家問題以降に社会の認識が大きく変化)。ただ、本来一部の関係者しか知らないはずの文書が外部に流出していることから、いつ誰に聞かれても問題がないように準備を図るべきだったと考えられます。特に、食品業界に対する社会の関心を鑑みれば、事実関係の正確な把握は行っておくべきでした。

3つ目は、翌年1月9日にされたメディアからの問合せへの対応になります。事実関係の特定ができなくとも、自社の体制を説明し、問題の範囲を特定すれば操業停止にする生産ラインを限定できた可能性があります。もともと、不二家は菓子事業本部と洋菓子チェーン事業本部の2事業本部制(当時)をとっていましたが、本件は洋菓子チェーン事業本部の一部の工場の問題に過ぎませんでした。自社の経営を端的的確に説明する訓練が十分だったとは言い切れません。曖昧な回答をした結果として、局所的な問題が会社全体の問題とされ、過剰な報道を誘発したのです。

コンプライアンス, CSR, 環境の新日本サステナビリティ研究所

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