媒体名: 中央経済社 「旬刊経理情報」 P49 (2009.06.01)

不二家問題は、局所的な問題に過ぎなかったことが瞬く間に企業全体の問題とされ、一部メディアの捏造が疑われる報道などを背景に、メディアの過剰なまでもの報道により経営に大きな打撃を与えました。今回はこの問題を例に、企業が取るべきリスク管理対応のポイントについて整理します。

不二家問題は、外部のコンサルタント会社による事実誤認や誤解をもたらしかねない報告書が外部に流出したことを端に当該報告書が内部告発文書とされ、会社ぐるみでの隠蔽が疑われ、大きな社会批判を受けたものでした。

このような社会批判に対するリスク管理対応は、まず情報開示に関する具体的な判断基準をあらかじめ持っておくことです。明確な判断基準があれば、事後的に何を問われても毅然とした対応ができ、不要な誤解を回避できます。不二家問題でも、当該報告書を公表しなかった理由を明確にしておけば不要な疑いを回避できるかもしれません。なお、判断基準は平時の時に決めておくべきです。一旦有事が生じると、経営者といえども不安感から保守的になり判断がぶれる可能性が高くなります。

次に、日常的に社会全般あるいは自社を取り巻く事業領域におけるその時々の社会の関心や要請について環境分析を行い、全ての役職員の共通の認識とするなど、役職員の社会に対するセンシティビティを高めておくことです。センシティブであれば、たとえ些細なことでも社会の関心や価値観に反することがあった時に、リスクとして認識することができ、迅速かつ適切な対応を図れます。同じ現象でも、役職員1人ひとりが、社会の環境変化に応じて問題だと感じ取ることのできる感性を養うことなくして危機管理への対応はできません。不二家問題では、科学的根拠に基づく消費期限に余裕があり、かつ製品の安全管理上何ら問題がなかったとしても、社会の関心が極端なまでも消費期限に向けられている現状では、消費期限切れの原材料を使用することは重大な問題であるとの認識が必要でした。

そして、問題の重要性を認識したら、すぐに事実関係を把握し、いつでも外部に対して説明ができる準備をすることです。実際には、複雑な背景事情を抱えていることも多く、即座に改善ができないことも多いのですが、一刻も早く、正確な事実関係を把握することです。特に、内部告発が急増する社会では、一部の関係者以外が持ち得ない資料を当事者以外が持っている場合には、いつどこに情報が漏れても仕方がないとの認識を持ち、いつでも説明できる準備をしておくことで、万が一に突然メディアから問われても、理路整然に毅然とした対応を図り、事実誤認や誤解されることのない説明が可能になります。

有事こそ、日頃の経営者の管理の実態が露見します。経営者が日常的に適切なリスクコントロールができていれば、いざ不慮の問題が生じても、慌てることなく日頃のリスク管理をもとに冷静な対応が可能となり、いつどこでも端的的確な説明ができることで、いたずらに局所的な問題を大きな問題に発展させることを防ぐことができます。この点、会社法は、取締役会の専決事項として内部統制システムの整備を要件としており、リスクマネジメント体制とコンプライアンス体制の整備は経営者の責任としています。


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