媒体名: 中央経済社 「旬刊経理情報」 P57 (2009.07.10)

有事はいつ起こるかわかりません。どんなに体制を整備しても、問題の発生を皆無することはできません。危機への対応で企業経営への影響の明暗を分けるのは、有事発生後3日以内の対応によります。

不二家問題は、誤解に基づく過剰報道が社会批判を誘発しましたが、発覚後3日以内に適切な対応ができていれば企業経営への影響を限定的にできたかもしれません。

そのためにはまず、正確な事実関係の特定と因果関係の分析が不可欠です。メディアが、取材を通じて多くの情報を持っているにもかかわらず正確な事実関係を把握することなく中途半端な説明をすれば、メディアに誤解を与え、思いもよらない社会批判を被り、経営に大きな打撃を与えます。

事実関係の把握に時間がかかったり、社会に対して誤解をもたらしかねない事象の場合は、専門家による第三者委員会を設置し、正確な事実関係を徹底的に調査し原因究明を行うことで、一定の時間を確保したり、事実関係の説明に客観性をもたせる必要があります。第三者の専門家の介在により客観的かつ冷静な対応ができ、不要な誤解が回避されます。

特に、隠蔽や偽装が疑われる可能性のあるものや専門性の高い分野は、注意が必要です。たとえば、科学的な根拠として何ら問題がなくても消費期限の設定のように社内で一旦定めたルールを逸脱することは社会的に理解が得られません。このような場合は、第三者の専門家を介在させ、安全確保の問題と企業の対応の問題とを明確にし、過剰な社会批判を回避させます。

なお、第三者委員会の委員の選定には、専門性に加え、業界固有の事情や歴史的経緯をとらえつつ相対的な洞察力を持ち、物事に対する正確な理解力と、自社との独立性と信頼性のバランスなどを勘案します。委員の人選次第で、社会批判の鎮静の度合いと後の企業の再起の成否に直結します。

次に、記者会見でどれだけ事実関係を的確に、かつ全て開示できるかです。企業に対する信頼や評判は、開示された内容よりも報道回数が大きく左右します。事実関係があるのに最初の記者会見で十分な説明ができなければ、「追い記事」が書かれ、世論をかきたてます。最初の記者会見が鍵を握ります。

なお、個人責任にすることはご法度です。個人責任を言い訳にした途端に、メディアは些細な事実を持ち出し、局所的な問題を組織問題に発展させ社会批判を煽ります。問題がない企業などありえません。どの組織にも必ず何らかの問題が内在している以上、自社に内在する問題を否定せずに、正確な事実関係と因果関係を徹底的に調査する姿勢を示すことで社会から一定の理解をもらうことです。

最後に、記者会見のタイミングも重要です。一見すると当たり前のことが、ひとたび問題が起こると、煽り立てるようなメディアを前に焦燥感などで冷静さを失い、常識的な判断ができなくなります。

公表すべきタイミングを逃したり、十分な準備もできないまま記者会見に臨み誤解を招く発言から過剰な社会批判を受けることもあります。何でも公表すれば良いものではありません。一律にどのタイミングがいいというものでもありません。メディアの動向や関心を冷静に分析し、事象の重要性などを総合的に勘案して決定することです。


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