2008年2月1日(金) セミナーを終えて(結果報告)
拝啓 陽春の候、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。
平素、新日本監査法人および弊法人グループに対して格別のご高配を賜りありがとうございます。本メールは2月1日開催セミナー「CSRと企業リスク 2008」にお越しいただきました皆様に差し上げております。遅くなり、恐縮いたしますが、改めまして、本セミナーへのご参加、厚く御礼申し上げます。
本セミナーでは、企業を取り巻く社会的要請を経営リスクと位置づけ、CSRが経済社会に根付いた一方で、CSRを実践していく時に具体的に何が課題になるのかという観点から、具体的に(1)気候変動、(2)非正規社員への対応、(3)マスメディアへの対応の3つを中心のテーマとして取り上げ、各分野の第一線で取組んでおられる各講師の先生方を招聘して企業経営との関係から論じていただきました。お蔭様をもちまして、本セミナーには延べで1,000名を超えるご参加をいただくことができ盛況のうちに閉会することができました。セミナー自体も、多くの方には高いご評価をいただく一方で、幅広い論点を短時間に詰め込んだため、十分な理解に至らなかった点についてはお詫びを申し上げます。このセミナーが、今後、皆様の企業経営における問題喚起とさせていただき、取り上げたテーマにいち早く取り組むことで、何らかのお役に立つことができれば、幸いでございます。
また、この度は、セミナーへのご参加にあたり、多くの皆様からアンケートのご回答にご協力いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。皆様からいただきましたご回答をもとに、簡単ではございますが、集計いたしましたので、その結果をご送付させていただきます。ご高覧いただければ幸いです。
各企業の経営管理手法への取組み動向調査結果 (390KB)
なお、本セミナーは、これまでCSRを基本テーマとして、CSRの普及・促進を目的として毎年開催してきたものであり、2003年は「企業戦略とCSR」、2004年は「CSRと独占禁止法」、2005年は、「危機に直面したとき、CSRをどのように遂行しますか」、2006年は「今、経営者は何をすればよいのか ~緊急事態における経営トップの規律とは~」など、時代を先取りしたセミナーを実施して参りました。今後も先進的な観点でのセミナーを開催し、社会への提案をしてまいりたいと存じておりますので、引き続きご参加いただければ幸い存じます。是非、私どものWEBサイトにも定期的に最新情報をアップしてまいりますのでご覧いただければと思います。
末筆ではございますが、御社の益々の御健勝と御多幸をお祈り申しあげます。
引き続き、弊法人および弊法人グループにつきご愛顧のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
< 当日の様子 >
2月1日、東京国際フォーラムで新日本監査法人主催セミナー「CSRと企業リスク2008」を開催。企業を取り巻く社会的要請を企業リスクとして捉え、2008-2009年における最大の企業リスク要因を気候変動・マスコミ対応・非正規社員の雇用のあり方として各分野の第一線で活躍している講師が多角的に論じました。
本セミナーは、参加申し込みが1,400名を超え、未だにCSRに対する社会的関心の高さを伺うことができました。これまで抽象的な捉え方をしていた「CSR」の概念を、どのように具体的に実践していくのかがポイントとなるとともに、企業内部で如何に根付かせ、継続的な取組みにしていくことができるかがかぎとなるのではないでしょうか。
新日本監査法人副理事長小島秀雄によるご挨拶と会場の風景
<CSRと企業リスクについて>
基調講演として麗澤大学大学院、高教授が登壇。「国際的な動き」として、温暖化問題に対するデリバ ティブ商品化などの動きを警告し、問題の本質に沿う企業行動の重要性を論じ、グローバリゼーション による貧困問題の解決に進む一方で広がる格差問題について提起。「国内的な動き」についても、2010年発行予定のISO26000ではステークホルダー・ダイアログが鍵となり、持続可能な社会の実現には国家レベルのみならず、地域/地方行政の建て直しが必要とし、応募型の行政改革委員会等への企業出身 者の参加を促した。最後に、偽装発覚や虚偽の財務報告で問題となっている企業倫理について、市場 から見えない企業内部での倫理判断が求められると結びました。

麗澤大学大学院国際経済研究科教授
京都大学経営管理大学院客員教授
高巌氏
<気候変動と企業リスク>
次に、UNEP(国連環境計画)特別顧問、末吉氏が登壇。気候変動原因を人為的とし、CO2排出量が経済に 多大な影響を与えることによりCO2本位となり、CO2を減らすことが新しい価値観として加わりつつあると提起。EUでは具体的な長期的削減目標を発表し、EU以外の国からの輸入品や航空機にも規制する方針であり、また、アメリカでも州・市単位での取り組みが進み、長期的目標の発表や法制化、他地域と の連携等の取り組みについて言及し、日本の出遅れについて指摘した。また、投資・融資の判断に環 境配慮を問う基準が加わり、長期的な視点で価値ある投融資を行う動きについて説明。企業にとって、 気候変動問題はリスクである一方、その対応によってはチャンスにもなり得ると結論しました。

UNEP(国連環境計画)特別顧問
末吉竹二郎氏
<非正規社員雇用管理に関する企業リスク>
前半最後として、第一芙蓉弁護士事務所、木下弁護士が登壇。労働派遣、請負、出向の労働形態の違いについて解説した上で、安易な労働力の調達が低賃金・不安全・不安定雇用に繋がるとの懸念を示し、非正規雇用の改善に向けたパートタイム労働法や最低賃金法などの改正の動きにより、行政もこれまで以上に厳しい取締りを実施し、指導や業務停止措置が採られてきていると説明。適法であったとしても、非正規雇用者にとっては「正規雇用」との格差が差別と認識される場合には労務リスクとなりえることを指摘しました。

第一芙蓉法律事務所弁護士
木下潮音氏
<マスメディアへの対応と企業リスク>
休憩後の後半開始、桐蔭横浜大学法科大学院、郷原教授が登壇。昨年1月に公刊した著書のタイトル「『法令遵守』が日本を滅ぼす」は決して逆説的に使用した言葉ではなく、「形式的に法令を遵守することを上から下へ命令すること」の重大な弊害への現実的な危惧である。郷原氏はこのように問題提起し、「偽装問題」を例に、実態とかい離した法令の遵守の強制がもたらす弊害を指摘し、コンプライアンスを「組織に向けられた社会的要請にしなやかに鋭敏に反応し目的を実現していくこと」と定義した上で、それを企業経営と融合させていく必要性を訴えた。続けて、重大不祥事発生時のマスコミ対応について、法的責任の有無の視点ではなく「社会の視点」を最優先にすることの重要性を指摘し、最後に、日本社会の現状を、押し寄せる「法令化」「競争化」「透明化」の波の交錯と表現し、それぞれが自己目的化することの危険性について警鐘を鳴らしました。

桐蔭横浜大学法科大学院教授
コンプライアンス研究センター長
郷原信郎氏
<実践的リスクマネジメント(社会法対応の内部統制構築)と行動規範>
新日本監査法人CSR推進部長大久保が講演。CSRとは「社会問題をビジネス化させること」と定義 し、社会問題の的確な理解の重要性について論じ、これに対する日本企業に横たわる課題を「職人気 質」による説明能力の欠如、「村社会」による一般社会の要請に対するセンシティビティの欠如であるとして問題提起。この問題に対し、「内部統制(仕組み)」と「行動規範(心)」のコラボレーションによる対策の必要性について説明し、「内部統制」整備への取組みと「行動規範」の策定・浸透にあたってはできるだけ現場における具体的な課題を反映させることが肝要だと訴えました。

新日本監査法人 CSR推進部長 社員
公認会計士
大久保和孝氏
<サステナブルな企業であるために~社会的要請に応える先進的なチェックアウトを>
本セミナー最後の講演は株式会社インテグレックス代表取締役社長、秋山氏。企業経営における「営業」と「コンプライアンス」は対峙するものではなく、互いに補完すべき存在であるとして概念整理。企業経営のサステナビリティ(事業継続性)に対し、現代の企業が直面する3つのリスク(非正規雇用、マスメディア、気候変動)に関して、CSRの視点により、非正規職員の経営理念理解、負の遺産としての業界慣習の見直し、地球環境変化に対応するための抜本的な経営方針の修正など、それぞれの必要性について論じました。

株式会社インテグレックス
代表取締役社長 秋山をね氏
最後に新日本監査法人代表社員、上野光正氏より閉会のご挨拶をさせていただいた。CSRは言葉の理解から具体的な実践へと段階が移り、変化し続ける経済環境の中で企業はいかに社会的要請を把握し、日常的な業務に落とし込めるかが、今後の企業競争力となるのではないのだろうかと結んだ。
最後まで多くの参加者にご参加いただきましたことを厚く御礼を申し上げるとともに、このセミナーが、皆様の今後の企業経営に何らかのお役に立てることを祈念しております。
CSRと企業リスク 2008 <気候変動・非正規雇用・マスメディア> の[当日の様子]をPDFでダウンロードしてご覧頂けます。
レポートをPDFで開く (400KB)